帰省したとき、親が玄関の段差でよろけた。廊下に手すりがあればいいのに、と思ったことはないでしょうか。実は介護保険に、住宅改修の費用を補助する仕組みがあります。この記事では、対象になる工事と、必ず守るべき申請の順番を整理します。

結論:20万円まで、自己負担1〜3割で工事ができる
介護保険には住宅改修費という給付があります。上限は20万円で、これは要介護度に関わらず同じです。自己負担は原則1割(所得により2割・3割)なので、20万円の工事なら自己負担は2万円から6万円ということになります。
利用するには、要介護または要支援の認定を受けていることが前提です。認定の受け方は親の介護が始まったら、最初にやることにまとめました。
そして、この制度には絶対に守るべき順番があります。

大事なのは、工事の前に申請することです。 事前に申請せずに改修をした場合、給付の対象とならないことがあります。「先に直してから、あとで請求すればいい」は通用しません。親が「もう業者に頼んじゃった」と言い出す前に、この仕組みを伝えておいてください。
その業者が訪問してきた業者だった場合は、工事の内容と金額もあわせて確認してください。「点検」を入口に高額な工事を契約させる手口は60歳以上の被害が多いとされています。詳しくは実家に来た「屋根の点検」は大丈夫?親を狙う点検商法とクーリング・オフをどうぞ。
対象になるのは6種類
補助の対象になる工事は決まっています。
| 工事 | 例 |
|---|---|
| 手すりの設置 | 廊下、階段、トイレ、浴室、玄関 |
| 段差の解消 | 敷居を平らにする、スロープの設置 |
| 床材の変更 | 滑りにくい床材へ、畳からフローリングへ |
| 扉の取り替え | 開き戸を引き戸に、ドアノブをレバーに |
| 便器の取り替え | 和式から洋式へ |
| 付帯する工事 | 上記に伴って必要になる工事 |
見てのとおり、対象は「動作を助ける」ための工事です。段差でつまずかない、立ち上がるときに掴まれる、扉を開けやすい。逆に、浴室そのものの新設や、老朽化した設備の交換といった目的の工事は対象になりません。
どこをどう直すかは、ケアマネジャーに相談してください。親の身体の状態を見たうえで、どの動作が危ないかを判断してもらえます。素人目には気づかない場所を指摘されることも多いはずです。
なお、車いすや歩行器、手すり(工事を伴わない置くタイプ)などは、福祉用具の貸与という別の仕組みで借りられます。工事をせずに済むなら、そちらのほうが手軽です。
知っておくと得をする3つ
- 限度額が復活する場合があります。 別の住宅に引っ越した場合と、要介護区分が3段階上がった場合は、再び20万円の枠を使えます。長い介護では、状態が変わったときに枠が戻ることを覚えておいてください
- 支払い方式が2つあります。 いったん全額を支払って後から給付分が戻る償還払いと、自己負担分だけを支払う受領委任払いです。どちらになるかは自治体によって異なるので、事前に確認を。手元の現金の準備が変わります
- 自治体独自の補助があることも。 介護保険とは別に、市区町村が住宅改修の助成を用意している場合があります。窓口で「ほかに使える制度はありますか」と一言聞いてみてください
実家が親の名義でない場合、賃貸の場合
見落としがちな点です。
改修する住宅は、原則として本人が住んでいる住宅であることが必要です。親が住んでいる実家なら問題ありませんが、その家の所有者が親でない場合(すでに子の名義になっている、親族と共有しているなど)は、所有者の承諾が必要になることがあります。
賃貸住宅の場合も、大家さんの承諾が要ります。分譲マンションなら管理規約の確認も必要です。
実家の名義が誰になっているかは、この場面でも効いてきます。相続登記の記事で書いたとおり、名義の確認は登記簿を取れば5分で済みます。
わが家の場合
母の家の玄関には、10年前から段差があります。私はずっと気になっていて、一度だけ「手すりつけようか」と言ったことがありました。
母の返事は「まだそんな歳じゃない」でした。それ以来、言っていません。
いま思うのは、あれは提案の仕方が悪かったということです。「あなたは弱っている」と受け取られる言い方をしてしまった。もし次に言うなら、「私が帰ったとき荷物を持って上がるのが怖いから」と自分の話にすると思います。終活の切り出し方でも同じことを書きましたが、主語を自分にする。それだけで、通る話は案外あります。
今日やることは、これだけ
- 次の帰省で、玄関と浴室とトイレの段差を見ておく
- 親が要介護・要支援の認定を受けているかを確認する
- 工事を考えるなら、業者より先にケアマネジャーへ相談する
