親の介護が始まると、真っ先に頭をよぎるのが仕事のことです。休みが足りない、両立できない、いっそ辞めるしかないのか。この記事では、辞めるという判断の前に必ず確認してほしい3つの制度と、それぞれの使いどころを整理します。

結論:辞める前に使える制度が、法律で3つ用意されている
育児・介護休業法という法律があり、介護を担う働き手のために制度が定められています。会社の温情ではなく、法律上の権利です。

大事なのは、この3つが役割の違うものだということです。日常の細かい用事には介護休暇、体制を作るためのまとまった時間には介護休業、そして日々の働き方そのものは残業免除などで調整する。組み合わせて使うものであって、どれかを選ぶものではありません。
介護休暇は、日常の細かい用事に
介護休暇は、1事業年度あたり5日(対象となる家族が2人以上なら10日)取得できます。通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談、役所での手続きといった、1日単位の用事に使うものです。
取得の単位や、給与が支払われるかどうかは勤め先の規定によります。就業規則で確認してください。
働き方そのものを調整する
休みを取るだけでなく、日々の働き方を変える請求もできます。所定外労働(残業)の免除、時間外労働を1か月24時間・1年150時間までに抑えること、深夜業(午後10時から午前5時)の制限。さらに、短時間勤務などの措置も定められています。
「休みを取る」より「毎日定時で帰る」ほうが介護の実態に合う場面は多いはずです。休業だけが選択肢ではありません。
なお、ここでいう「要介護状態」は、介護保険の要介護認定とは別の定義です。負傷や疾病、身体上・精神上の障害により、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態を指し、介護保険の認定を受けているかどうかは問われません。認定待ちの段階でも対象になり得る、ということです。
介護休業は「自分が介護するため」の休みではない
いちばん誤解されているのがここだと思います。
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。93日と聞くと「3か月で介護が終わるわけがない」と感じますが、この制度はそもそも、自分が付きっきりで介護するための期間として設計されていません。
93日は、介護の体制を作るための時間です。地域包括支援センターに相談し、要介護認定を申請して結果を待ち、ケアマネジャーを決めてサービスを組み立てる。認定結果の通知だけで原則30日かかることを思えば、この期間の意味が見えてきます。
3回に分けられるのも、その発想です。入院したとき、退院して在宅に切り替えるとき、施設を探すとき。状況が変わる節目ごとに使う。最初にまとめて使い切らないでください。
対象家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。義理の親も含まれます。
お金は「介護休業給付金」で補える
介護休業中の賃金の扱いは会社によりますが、無給であっても雇用保険から介護休業給付金を受け取れる場合があります。
支給額の目安は、休業開始時の賃金日額に支給日数を掛けた額の67%です。申請先は勤務先を管轄するハローワークで、実務上は会社を通じて手続きすることが多くなります。
いくつか注意点があります。上限額が定められているため、賃金が高い方ほど67%より実質の割合は下がります。また、休業中に会社から賃金の支払いがある場合、その額によって給付金が減額されたり、支給されなかったりすることがあります。雇用保険の被保険者であることが前提で、有期雇用の方には別途要件があります。
金額や要件は改定されることがあるので、実際の見込み額はハローワークか勤務先に確認してください。
「辞める」を選ぶ前に確認したい3つ
- 自分の会社の就業規則を読む。法律は最低ラインで、会社によっては法定を上回る制度(有給の介護休暇、より長い休業期間)を持っています。使えるものを知らずに辞めるのが、いちばんもったいない選択です
- 会社に「いつまで」を伝える。上司に相談するとき、「介護があるので」だけでは対応のしようがありません。「認定結果が出るまでの1か月」「ケアプランが固まるまで」と期限を添えると、会社も調整しやすくなります
- 兄弟姉妹と役割を分ける。仕事を持つのは自分だけとは限りません。負担が1人に偏ると、辞めるしか選択肢がなくなります。分担の考え方は兄弟姉妹で実家の話をどう進める?にまとめました
制度の詳細や、勤務先とのやりとりで困ったときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談窓口です。給付金についてはハローワークが窓口になります。
一度辞めてしまうと、同じ条件の仕事に戻るのは簡単ではありません。介護は数年から十数年続くこともあります。辞めた後の家計を、介護が終わったその先まで含めて考えてみてください。
わが家の場合
わが家はまだ、この制度を使う場面にはなっていません。それでも先日、自分の会社の就業規則を開いて、介護休業の項目を読みました。
読んでみて驚いたのは、制度があること自体は知っていたのに、日数も申請の手順も何ひとつ把握していなかったことです。「うちの会社にもあるはず」という認識だけで、10年以上働いてきました。
10分もかからず読み終わりました。使う日が来ないかもしれない。でも、いざというときに「制度があるかどうか」から調べ始めるのと、「あることは知っている」から始めるのとでは、その日の余裕がまるで違うはずです。
今日やることは、これだけ
- 自分の会社の就業規則で、介護休暇と介護休業の項目を読む
- 法定を上回る制度がないか確認する(日数・有給かどうか)
- 兄弟姉妹それぞれの勤め先の制度も、共有しておく
