在宅での介護が限界に近づいたとき、施設という選択肢が現実味を帯びてきます。ところが調べ始めると、特養、老健、介護付き、住宅型、サ高住と名前ばかりが並び、何がどう違うのか分かりません。この記事では、施設の種類を整理し、選ぶときの順番をまとめます。

結論:「公的か民間か」と「目的」の2つで分かれる
施設の名前を全部覚える必要はありません。大きく公的施設と民間施設に分かれ、公的施設の中に目的の違う2つがある、と理解すれば十分です。

とくに混同されやすいのが特養と老健です。名前が似ていますが、役割はまったく違います。特養は暮らす場所、老健は在宅に戻るためにリハビリをする場所。老健は3か月ごとに入所の継続を判定する仕組みで、リハビリを目的とせず療養生活を送るためだけの入所は原則としてできないとされています。「長く預かってもらえる場所」を探しているなら、老健は前提が違います。
それぞれの特徴
特別養護老人ホーム(特養)
公的な施設で、原則として65歳以上・要介護3以上が対象です。入居一時金がなく、費用を抑えやすいのが最大の利点です。終の住処として長く暮らせます。
一方で希望者が多く、申し込んですぐ入れるとは限りません。ここが重要な点です。「入居を検討し始めたら、実際に入る予定がなくても早めに申し込んでおく」という考え方があります。順番が回ってきたときに断ることもできるので、ケアマネジャーに相談してみてください。
介護老人保健施設(老健)
同じく公的な施設で、在宅復帰を目指してリハビリに取り組むための場所です。医師や看護師、リハビリ職が配置されています。
入院と在宅の間をつなぐ施設、と考えると位置づけが分かりやすいと思います。退院後すぐ自宅に戻るのが不安なとき、体を戻すために使う。入院の記事で「退院後の生活を早めに考え始める」と書きましたが、その選択肢のひとつがここです。
民間の施設(有料老人ホーム・サ高住)
介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などがあります。自立している方から要介護の方まで幅広く受け入れており、空きがあれば比較的早く入居できます。
違いを一点だけ挙げるなら、介護がどう提供されるかです。介護付き(特定施設)は施設の職員が介護を行いますが、住宅型やサ高住は「住まいと安否確認」が基本で、介護は外部の訪問介護やデイサービスを利用する形が多くなります。同じように見えて仕組みが違うので、見学のときに必ず確認してください。
費用は施設によって大きく変わります。入居一時金の有無、月額の幅、介護が必要になったときの追加費用。パンフレットの月額だけで判断せず、「要介護度が上がったら総額はいくらになるか」まで聞いておくと安心です。
選ぶ前に決めておきたい3つ
- 誰が通うか。面会に行くのは誰で、どのくらいの頻度か。立地はこれで決まります。安いけれど遠い施設を選んで、結局誰も行かなくなる、というのは避けたいところです
- お金の出どころと上限。原則として親自身の財産から出すのが、後々もめないやり方です。年金と貯蓄で月いくらまで出せるかを先に決めてから探すと、候補が絞れます。親の口座が使えない状態なら認知症と預金の記事を確認してください
- 医療がどこまで必要か。持病や医療的なケアの有無で、入れる施設が変わります。かかりつけ医とケアマネジャーに、いまの状態を前提に相談してください
施設探しは、まずケアマネジャーに相談するのが近道です。地域の事情を知っていますし、地域包括支援センターでも情報をもらえます。見学は必ず複数、できれば食事の時間帯に行ってください。
決めるのは、たいてい急なとき
施設を探し始める場面は、たいてい落ち着いた状況ではありません。入院した親の退院が迫っている、在宅の介護が限界にきている。そういうときに、初めて種類の違いを調べることになります。
だから、元気なうちに「名前だけでも知っておく」ことに意味があります。特養は待つことがある、老健は在宅に戻るための場所、民間は早く入れるが費用の幅が大きい。これだけ頭に入っていれば、急なときの理解の速さがまるで違います。
そして、施設に入れることを後ろめたく思わないでください。在宅で見きれないのは、家族の愛情が足りないからではありません。サービスを使うのは家族が休むためでもある、という考え方は、施設についても同じです。
親が施設に入った後の実家をどうするかはこちらにまとめました。
わが家の場合
母とは、施設の話をまだしていません。ただ、父を見送ったあとに母がぽつりと言ったことがあります。「私は最後まで家がいい」。
その気持ちは尊重したい。でも、それが叶わない日が来るかもしれないことも、たぶん母自身が分かっています。だから私がやるべきなのは、母の希望を家族で共有しておくことと、それでも施設が必要になったときに慌てないよう、選択肢を先に知っておくことの両方だと思っています。
希望を聞くことと、備えることは、矛盾しません。
今日やることは、これだけ
- 親に「最後までどこで過ごしたい?」と一度だけ聞いてみる
- 年金と貯蓄で、月いくらまで出せるかを家族で試算しておく
- 施設を考え始めたら、まずケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
