親が認知症になると預金は下ろせない?口座が止まる仕組みと、元気なうちの3つの備え

親が認知症になると預金は下ろせない?口座が止まる仕組みと、元気なうちの3つの備え

親が認知症になると、銀行口座からお金が下ろせなくなる。聞いたことはあっても、なぜそうなるのか、いつ何をしておけばいいのかは、意外と知られていません。この記事では、口座が止まる仕組みと、時期別の選択肢、元気なうちにできる備えを整理します。

通帳と電卓でお金を確認するイメージイラスト
目次

結論:「凍結」ではなく「本人確認ができなくなる」。だから早いほど選択肢が多い

正確に言うと、認知症で口座が自動的に凍結される制度があるわけではありません。銀行の窓口で本人の意思確認ができなくなると、預金者本人を守るために、取引に応じてもらえなくなるのです。家族であっても、本人の代わりに下ろす法的な権限はありません。

つまり問題の本質は、「本人の意思を確認できる形を、元気なうちに作っておけるか」です。だから、動く時期が早いほど選択肢が多くなります。

認知症に備える預金の選択肢を時期別に比較した図解

なお、亡くなった後の口座の話は別の仕組みです。そちらは死亡すると銀行口座はいつ凍結される?にまとめています。

「本人のための支払い」なら応じてもらえる場合がある

判断能力が下がった後の話を先にしておきます。

全国銀行協会は2021年に、認知判断能力が低下した顧客との取引についての考え方を公表しました。基本は成年後見制度の利用を促すとしたうえで、手続きが済むまでの間など、やむを得ない場合には、医療費や介護費といった本人のための費用の支払いであることを確認したうえで対応することが望ましい、という内容です。

これは「親族なら下ろせる」という意味ではありません。全銀行に一律の対応を求めるものでもなく、実際の運用は銀行ごとに違います。請求書などで使いみちを示せれば応じてもらえる場合がある、という位置づけで理解してください。困ったときは、口座のある銀行に事情を伝えて相談するのが最初の一歩です。

なお、医療費そのものには高額療養費制度の上限があります。入院時のお金の全体像は親が入院したら。保証人・入院費・高額療養費の基礎知識をどうぞ。

継続的にお金の管理が必要な状態であれば、原則に戻って成年後見制度を検討することになります。制度の仕組みと注意点は成年後見制度とは?に書きました。一度始めるとやめられない制度なので、この記事の主題である「手前の備え」を知ったうえで判断してほしいのです。

元気なうちの3つの備え

1. 代理人カード(銀行の仕組み)

本人の口座に、家族用のキャッシュカードを追加できる銀行があります。生活費の引き出しを日常的に家族が手伝う形を、銀行の正式な仕組みとして作れます。

ただし注意点が2つ。対応していない銀行も多いこと。そして、代理人カードはあくまで「本人の意思で家族に依頼している」建て付けなので、本人の判断能力が失われた後の利用は本来想定されていないことです。万能ではなく、次の選択肢への時間稼ぎと考えるのが安全です。

なお、暗証番号を家族が聞いて本人のカードで下ろす方法は、規約違反になり得るうえ、後から他の相続人に「勝手に下ろした」と疑われる火種になります。正式な仕組みを使ってください。

2. 日常生活自立支援事業(公的サービス)

判断能力に不安が出てきた段階で使えるのが、社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業です。公共料金や医療費の支払い、通帳の預かりといった日常的な金銭管理を支援してくれます。利用料は地域によりますが、訪問1回あたり平均1,200円程度です。

条件がひとつあります。この事業は本人との契約で始まるため、契約の内容を理解できる判断能力が残っているうちしか使えません。「そろそろ心配」の段階で、親の地域の社会福祉協議会に相談してください。地域包括支援センター経由でもつながります。

3. 家族信託・任意後見(契約による備え)

より本格的な備えが、家族信託と任意後見です。家族信託は、財産の管理を家族に託す契約。任意後見は、判断能力が下がった後の後見人を、元気なうちに自分で選んでおく契約です。

どちらも本人が元気なうちにしか契約できません。そして、財産の内容や家族構成によって向き不向きが変わり、費用もかかります。ここは司法書士や弁護士など専門家に相談して設計する領域です。「うちに必要か」を聞くだけでも、相談する価値があります。

わが家の場合

母の口座は、以前口座の整理をしたときに3行まで減らしました。ただ、この記事で書いたような「下ろせなくなる備え」までは、正直まだ何もしていません。

それでも、ひとつだけ決めたことがあります。母のメインバンクが代理人カードに対応しているかを、次の帰省までに調べておくこと。対応していれば母に提案してみて、嫌がられたらそれまで。無理には進めません。

お金の話は、親の警戒心がいちばん出やすい話題です。だからこそ「お母さんのお金を、お母さんのために使えなくなると困るから」という言い方で、本人のための備えだと伝えるつもりです。実際、それがこの備えのすべてですから。

NEXT STEP

今日やることは、これだけ

  • 親のメインバンクが代理人カードに対応しているか調べる
  • 親の地域の社会福祉協議会の連絡先を控えておく
  • 「介護のお金はどの口座から出すか」を親と一言だけ話してみる

出典

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この記事を書いた人

中心メンバーは、数年前に父を見送った40代の会社員。デジタル遺品や実家の整理で「準備しておけばよかった」と痛感した経験から、同じ立場の方に向けて、親の「もしも」に少しずつ備えるための情報を集めて記事にしています。

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