親が老人ホームなどの施設に入ることになったとき、多くの家族が直面するのが「誰も住まなくなる実家をどうするか」です。感情とお金の両方が絡む、答えの出しにくい問題。この記事では、残す場合と手放す場合それぞれの考え方と、判断の前に知っておきたい注意点を整理します。
結論:急いで結論を出さなくていい。ただし「放置」だけは避ける
まずお伝えしたいのは、施設入居と同時に実家の結論を出す必要はないということです。親の気持ちの整理、家族の話し合い、荷物の整理。どれも時間がかかって当然です。
ただし、「決められないから何もしない」は別の話です。誰も住まない家は傷むのが早く、放置が続けば固定資産税が上がるリスクもあります。「まだ決めない」を選ぶなら、月1回の換気・通水などの管理はセットで始めてください。
なお、施設入居を検討し始めた段階なら、要介護認定やケアマネジャーへの相談が先です。入口の手続きは親の介護が始まったら、最初にやることにまとめています。在宅で使えるサービスの選択肢は介護保険で使えるサービス。訪問・通所・ショートステイの使い分けと自己負担に整理しました。施設そのものの選び方は親の施設、どう選ぶ?特養・老健・有料老人ホームの違いをどうぞ。
残す?手放す?それぞれの特徴

残す選択には、「親の帰る場所を保てる」という何よりの価値があります。施設が合わなかった場合の受け皿にもなりますし、外泊時に過ごす場所にもなる。一方で、固定資産税と管理の手間は続きます。貸して収入を得る道もありますが、荷物の整理や修繕、借り手との関係など、実務の負担は小さくありません。
なお、施設に移るときに住民票も移した場合は、実家の登記簿上の住所が古いままになります。2026年4月から住所の変更登記は義務になっているので、親が施設に入ったら、実家の登記住所も変える?2026年4月からの義務化で対応を確認しておいてください。
手放す選択は、管理と税の負担から解放され、まとまったお金を施設費用に充てられるのが大きな利点です。ただし当然、戻る場所はなくなります。親自身の気持ちの区切りがつくまでは、急がないほうがいい選択です。
手放すなら知っておきたい「税の期限」
売却を視野に入れる場合、ひとつだけ早めに知っておきたいことがあります。マイホームを売ったときの税の特例(3,000万円特別控除)には期限があり、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までの売却が要件のひとつとされています。
つまり「いつか売るつもり」のまま年月が経つと、使えたはずの特例が使えなくなる可能性があるのです。適用には細かい要件があり、施設入居のケースは判断が分かれる部分もあるため、売却を考え始めたら早めに税理士か税務署に相談してください。ここでは「期限のある特例が存在する」ことだけ覚えておけば十分です。
なお、相続後に売る場合の特例(空き家の3,000万円特別控除)は別の制度です。要件と期限は相続した実家を売る流れ。「空き家の3,000万円特別控除」は期限で決まるにまとめました。
判断の前にやっておきたい3つのこと
- 親の気持ちを聞く。「家をどうしたいか」は、本人がいちばん言い出しにくい話題です。終活の切り出し方の要領で、少しずつで構いません。きょうだい間の足並みの揃え方は兄弟姉妹で実家の話をどう進める?もめる原因は、お金より「偏り」に
- 荷物の整理を始める。残すにも貸すにも売るにも、必ず通る道です。実家の片づけの進め方を参考に、貴重品と書類のありかの把握から
- その土地に何ができるか調べる。売る・貸す・建てるの向き不向きは土地によって違います。相続した実家の土地、売る・貸す・建てる?で、判断の順番と材料の集め方を解説しています
- 維持費を書き出す。固定資産税・光熱費の基本料・火災保険・管理の交通費。「残す」のコストを数字にすると、家族の話し合いが具体的になります。なお空き家になると火災保険の扱いが変わる場合があります(実家が空き家になったら火災保険はどうなる?黙っていると出ないことがある)
わが家の場合
母はまだ実家で元気に暮らしていますが、「もし施設に入ることになったら、この家どうしたい?」は、先日の帰省で初めて聞いてみました。
母の答えは「そのときは好きにしていいけど、庭の金木犀だけは残念ね」でした。結論でも何でもない一言ですが、母がこの家の何を大事にしているかを初めて知りました。こういう断片を集めておくことが、いざ判断するときの家族の指針になるのだと思います。
今日やることは、これだけ
- 実家の維持費(税・保険・光熱費)を一度書き出してみる
- 親に「この家の何がいちばん大事?」を聞いてみる
- 売却の可能性が少しでもあるなら、税の特例の期限を頭に入れておく
