サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違いを調べると、説明がかみ合わないことがあります。別々の施設として並べる記事もあれば、同じものだと書く記事もある。この記事では、法律がどう整理しているかを確認したうえで、見学のときに何を聞けばいいかまで通しで見ていきます。
施設の種類そのものは親の施設、どう選ぶ?にまとめました。ここは、そのうち民間の2つを深掘りする記事です。
結論:この2つは、並ぶものではなく重なるものです

サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、建物の種類ではなく「登録の制度」です。
高齢者の居住の安定確保に関する法律の第5条第1項は、賃貸住宅または有料老人ホームに高齢者を入居させ、状況把握サービスと生活相談サービスなどを提供する事業を行う者は、都道府県知事の登録を受けることができる、と定めています。
ここが読み違えやすいところです。条文は「賃貸住宅または有料老人ホーム」と書いています。つまり、有料老人ホームがサ高住として登録されることもある。両者は排他的な関係ではありません。
同じ法律の第23条では、登録を受けている有料老人ホームの設置者について、老人福祉法第29条第1項から第3項までの規定は適用しない、とされています。届出の制度が、登録に置き換わる形です。
一方の有料老人ホームは、老人福祉法第29条第1項で定義されています。老人を入居させ、入浴・排せつ・食事の介護、食事の提供その他の日常生活上必要な便宜を供与する事業を行う施設で、老人福祉施設などに当たらないもの。これを設置しようとする者は、あらかじめ都道府県知事に届け出ることになっています。
言い換えると、有料老人ホームは「何をしている施設か」の定義で、サ高住は「どの基準で登録されたか」の区分です。比べる軸が違うので、どちらが上という話にはなりません。
サ高住の登録基準は、条文で数字まで決まっています
サ高住を選ぶ側にとって意味があるのは、登録基準が省令で具体的に決まっている点です。
国土交通省・厚生労働省関係の施行規則では、各居住部分の床面積は25平方メートルとされています。ただし、居間や食堂、台所などの共用部分が高齢者が共同して利用するために十分な面積を持つ場合は18平方メートルです。パンフレットで18平方メートルと書かれていても基準外ではなく、共用部分がある型だと考えてください。
設備は、原則として各居住部分が台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室を備えること。こちらにも例外があり、共用部分に適切な台所・収納設備・浴室があって同等以上の居住環境が確保される場合は、居室に備えなくてよいとされています。逆にいえば、水洗便所と洗面設備は居室側に必要です。
サービスの基準も具体的です。
- 状況把握サービスと生活相談サービスは、医師・看護師・准看護師・介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護職員初任者研修の修了者などが、原則として夜間を除いて常駐して提供すること
- 状況把握サービスは、居室への訪問その他の適切な方法で、毎日1回以上提供すること
- 常駐していない時間は、各居住部分に通報する装置を設置して状況把握サービスを提供すること
「原則として夜間を除き」という言い回しに注目してください。夜間に職員がいないことは、基準を満たしたうえで起こりえます。見学のときは、夜に誰がいるのか、いないなら通報装置がどう動くのかを聞いておくと実態がつかめます。
なお、これらの基準は都道府県や市町村の計画で強化されたり緩和されたりすることがあります。地域によって上乗せがある前提で、登録窓口の案内を確認してください。
前払金のルールは、どちらにもあります
まとまったお金を先に預ける場合、返還のルールがどうなっているかは必ず確認したいところです。
有料老人ホームについて、老人福祉法第29条第8項は、家賃・敷金・介護等の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならないと定めています。第9項では前払金の算定の基礎を書面で明示することと保全措置を講じることを、第10項では一定の期間内に契約が解除されたり入居者が亡くなったりした場合に前払金を返還する契約を結ぶことを求めています。
その「一定の期間」が、老人福祉法施行規則第21条にあります。入居後3か月が経過するまでの間に契約が解除され、または入居者の死亡により終了した場合は3か月。このとき控除してよい額は、家賃等の月額を30で除した額に、入居の日から終了した日までの日数を掛けた額とされています。
サ高住についても、高齢者住まい法第7条第1項第6号と、国土交通省・厚生労働省関係の施行規則第12条が、ほぼ同じ内容を定めています。期間は3か月、控除の計算も月額を30で割って日数を掛ける方法です。
一般に「90日ルール」と呼ばれているのは、この仕組みのことです。短期間で退去や死亡があったときに前払金がそのまま事業者に残らないように、法令の側で歯止めがかけられています。
契約書を読むときは、前払金の算定の基礎(何か月分を想定した金額なのか)と、返還債務の額をどう計算するのかが書かれているかを見てください。書かれていないほうが例外です。
入院を理由に出されることはありません
サ高住の登録基準には、もうひとつ知っておきたい条項があります。
高齢者住まい法第7条第1項第6号ヘは、入居契約が「事業者が、国土交通省令・厚生労働省令で定める理由により居住部分を変更し、またはその契約を解約することができないもの」であることを求めています。
その理由が、施行規則第13条に2つ挙げられています。入居者の病院への入院と、入居者の心身の状況の変化です。ただし、その理由が生じた後に入居者と事業者が居室の変更や解約について合意した場合は、この限りではないとされています。
つまり、入院したから、あるいは介護度が上がったからという理由だけで、事業者の側から部屋を移したり契約を切ったりすることはできない仕組みです。合意があれば別ですが、合意なしに一方的に、とはならない。
ここは、親の状態が変わることを前提に住まいを探す家族にとって、かなり大きな意味を持ちます。見学の段階では元気でも、数年先に状況は変わります。そのときにどうなるかを、パンフレットではなく契約書の条項で確認しておいてください。
有料老人ホームの場合は、この登録基準の適用はありません。退去の条件がどう書かれているかを、契約書で個別に読む必要があります。
費用の全体像は介護の自己負担にも上限があるや負担限度額認定もあわせて確認すると、月々いくらまで出せるかの見当がつきます。契約内容の判断に迷う場合は、地域包括支援センターや担当のケアマネジャー、消費生活センターに相談してください。
わが家の場合
母の住まいについては、まだ何も決まっていません。それでも、調べていて考えが変わった部分がありました。
これまでは「サ高住は安くて自由、有料老人ホームは高くて手厚い」くらいの雑な理解でいたのです。実際に条文を読むと、分かれ目はそこではありませんでした。登録を受けているかどうかで、約束されている中身が違う。
母に見せられる言葉で言うなら、「毎日1回は誰かが様子を見にくる」と「入院しても部屋はそのまま」の2つだと思います。パンフレットの写真より、この2行のほうが母には届く気がしています。
今日やることは、これだけ
- 気になる住宅が登録を受けているか、サービス付き高齢者向け住宅情報提供システムで検索する
- 見学のときに、夜間に職員がいるかどうかを聞く
- 前払金がある場合は、算定の基礎と返還額の計算方法が契約書に書かれているか確かめる
出典
- e-Gov法令検索「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(第5条・第7条・第23条)
- e-Gov法令検索「国土交通省・厚生労働省関係高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則」(第8条・第9条・第11条・第12条・第13条)
- e-Gov法令検索「老人福祉法」(第29条)
- e-Gov法令検索「老人福祉法施行規則」(第21条)
- 国土交通省・厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」
