相続した実家の土地が、売れない。貸す相手もいない。それでも固定資産税と管理の手間は続きます。こうした土地を国に引き取ってもらう制度が2023年に始まりました。この記事では、使える条件と費用、そして実家の場合につまずきやすい点を整理します。

結論:制度はある。ただし、建物が建っていると申請できません
相続土地国庫帰属制度は、相続などで取得した土地の所有権を国に引き取ってもらうための仕組みです。法務大臣に承認を申請し、認められて負担金を納めた時点で、土地の所有権が国のものになります。
実家の場合、最初の関門がここです。法務省の案内では、建物がある土地は申請できない土地(却下事由)に挙げられています。家が建ったままでは使えません。解体してからの申請になります。
つまりこの制度は、更地になった土地や、もともと建物のない田畑・山林のための出口です。実家をどうするかを考える段階では、売却や活用を先に検討することになります。判断の順番は相続した実家の土地、売る・貸す・建てる?にまとめました。
申請できるのは、相続で取得した人
対象になるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人です。売買などで自分が買った土地は、基本的に対象になりません。
共有の土地は、共有者の全員が共同して申請する必要があります。相続以外の原因で持分を取得した共有者がいても、相続で取得した共有者がいれば、全員で申請することで利用できるとされています。
もうひとつ押さえておきたいのが、制度が始まる前に相続した土地も対象になることです。法務省は、数十年前に相続した土地も対象になると説明しています。祖父母の代から名義が動いていない土地でも、先に相続登記を済ませれば検討できます。名義が2代分たまっている場合の進め方は数次相続の記事をどうぞ。
申請先は、土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局です。支局や出張所では受け付けていません。
引き取ってもらえない土地

条件は2段階に分かれています。そもそも申請ができない土地(却下事由)と、申請はできても承認されない土地(不承認事由)です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 申請できない | 建物がある/担保権や使用収益権が設定されている/他人の利用が予定されている/土壌汚染されている/境界が明らかでない |
| 承認されない | 一定の勾配・高さの崖がある/管理を阻害する有体物が地上にある/除去が必要な有体物が地下にある/隣地の所有者等との争訟によらなければ管理できない/その他、通常の管理・処分に過分な費用や労力がかかる |
実家の土地で引っかかりやすいのは、境界です。古い土地は境界標が失われていることがあり、確定には測量と隣地の立会いが必要になります。ここで時間と費用がかかります。
費用は2回に分かれてかかります
費用は審査手数料と負担金の2段階です。
審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。申請書に収入印紙を貼って納めます。ここで注意したいのは、申請を取り下げた場合や、審査の結果として却下・不承認になった場合でも、手数料は返ってこないことです。
負担金は、承認された後に納めるお金です。国が管理することになる土地について、国有地の種目ごとに10年分の標準的な費用を考慮して算定されます。市街化区域や用途地域、農用地区域などでは面積に応じた算定になります。法務省のサイトに自動計算のシートが用意されているので、見当をつけたい場合はそちらで確認してください。
納付の期限にも決まりがあります。負担金の通知が到達した日の翌日から30日以内に納めないと、承認が失効します。失効すると、同じ土地でもう一度申請するには最初からやり直しです。
なお、隣接する2筆以上の土地が同じ種目であれば、一つの土地とみなして負担金を算定するよう申し出ることができます。細かく分かれた土地を相続した場合は、この特例を確認してください。
手続きは専門的な判断を含みます。使えそうかどうかの見当をつける段階で、法務局の相談窓口か司法書士に相談するのが確実です。
わが家の場合
母の実家は、祖父の名義のまま20年以上動いていませんでした。相続人は8人。あの土地のことを考えると、いつも最後は「で、誰が引き取るの」で止まります。
この制度を知って、少し気が楽になりました。出口があると分かっているだけで、話を始められる気がします。
ただ、あの家はまだ建っています。更地にする費用は誰が出すのか。結局そこから、という話になるのだとも思います。
今日やることは、これだけ
- 実家の土地に建物が残っているかどうかを確認する
- 境界標があるか、測量図が残っているかを探す
- 使えそうなら、土地がある都道府県の法務局の本局に相談する
出典
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」
