相続放棄をするかどうかは、借金があるかで決まります。ところが「どうやって調べるか」は、あまり書かれていません。この記事では、信用情報機関への開示請求を、3つの機関の公式案内で確認します。
放棄そのものの期限と手続きは相続放棄は3か月以内にまとめました。ここは、その判断材料を集める話です。
結論:信用情報は3か所に分かれています

個人の借入れの記録を集めている機関は、CIC、JICC、全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センターの3つです。
加盟している会社が機関ごとに違うので、1か所だけ調べても全体は分かりません。親がどこから借りていたかが分からないから調べているわけで、だいたいは3か所すべてに出すことになります。
亡くなった方の情報を請求できるのは、原則として法定相続人です。CICの案内では、亡くなられた方の開示申込手続きができる方は法定相続人のみとされています。全国銀行個人信用情報センターでも、法定相続人および法定相続人の法定代理人に限り被相続人の開示ができる、と書かれています。
JICCだけ少し広く、亡くなられた方の信用情報については法定相続人または2親等以内の血族が開示手続きを行うことができる、と案内されています。
いずれも郵送での手続きです。本人がスマートフォンで即日確認できる仕組みは、亡くなった方には使えません。
手数料と払い方が、それぞれ違います
ここが地味に引っかかるところです。
CICの郵送開示は1,500円で、開示利用券(コンビニチケット)または定額小為替証書で支払います。
JICCは2,177円(税込)で、コンビニで郵送開示利用券を購入します。定額小為替証書による受付は行っていないと明記されています。速達を希望する場合の購入金額は2,511円です。
全国銀行個人信用情報センターは2,403円で、コンビニで「本人開示・申告手続利用券」を購入します。内訳は開示手数料2,060円と発券手数料343円です。こちらも、ゆうちょ銀行発行の定額小為替証書は受け付けていないとされています。
3か所に出すと、合計でおよそ6,000円。郵便局で定額小為替を買って3通送る、というやり方では通りません。コンビニで買う券が2つあります。
なお、登録情報がなかった場合でも手数料は戻りません。「何も出てこなかった」ことを確かめるための費用でもあります。
法定相続情報一覧図があると、どこでも楽になります
3つに共通して効くものがあります。法務局が発行する法定相続情報一覧図です。
CICでは、申込者が法定相続人であることが確認できる書類として、法定相続情報一覧図(法務局発行・発行日から3か月以内の原本)が挙げられています。これがない場合は戸籍謄抄本一式と相続関係説明図(系図)の2点が必要です。
JICCでは、法務局発行の法定相続情報一覧図(登記官の認証文言付きの書類原本)を提出する場合、法定相続人であることを確認する書類と、亡くなったことを確認する書類としての戸籍謄本等の提出は原則不要とされています。
全国銀行個人信用情報センターでは、法定相続情報一覧図を提出した場合、開示請求者の本人確認書類が1種類で済むと案内されています。提出しない場合は2種類です。
つまり、先に一覧図を取っておくと、3か所すべてで書類が軽くなります。戸籍の集め方は親の戸籍はどこで取る?に、一覧図の作り方は相続登記は自分でできる?にまとめました。
3か月に間に合うか
気になるのは時間だと思います。
民法第915条第2項には、相続人は相続の承認または放棄をする前に相続財産の調査をすることができる、とあります。調べること自体は認められています。
ただ、戸籍を集めて、一覧図を取って、3か所に郵送して、結果が返ってくるまで。これを3か月でやるのは、他の手続きと並行するとかなり厳しい日程です。
同じ第915条第1項のただし書きでは、この期間は利害関係人または検察官の請求によって家庭裁判所が伸長できるとされています。裁判所の案内でも、3か月以内に財産の状況を調査してもなお判断する資料が得られない場合は、期間の伸長を申し立てることができると書かれています。
間に合わないと思った時点で、弁護士や司法書士に相談してください。調べ終わってから相談するのでは遅いことがあります。
なお、信用情報に載るのは加盟している会社との取引です。個人間の貸し借りや、連帯保証人になっているかどうかは、ここでは分かりません。親の書類や通帳、郵便物を見ることも並行して必要になります。口座の探し方は親の口座、どこにあるか分からないにあります。
わが家の場合
父のときは、借金の心配をしませんでした。母が「ないはずよ」と言ったからです。
いま思うと、その「はず」に根拠はありませんでした。父は自分のお金の話を家でしない人でした。母が知らない借入れがあった可能性を、私たちは確かめていない。
結果的に何も起きなかったので、それでよかったことになっています。でも、よかったのは運がよかったからで、判断したわけではなかった。調べる方法があると知ったいま、そう思います。
今日やることは、これだけ
- 借金の心当たりがあるなら、まず法定相続情報一覧図を取ることから始める
- 3か所に出す前提で、コンビニで買う券が必要だと覚えておく
- 3か月に間に合わないと思った時点で、弁護士か司法書士に相談する
出典
- CIC「郵送で開示する」(ご本人がお亡くなりの場合)
- 日本信用情報機構(JICC)「二親等以内の血族 法定相続人等による開示」
- 全国銀行協会「郵送による開示手続」(全国銀行個人信用情報センター)
- e-Gov法令検索「民法」(第915条)
- 裁判所「相続の放棄の申述」
