葬儀と手続きが一段落したころ、「これ、あなたが持っていたら」という話が出てきます。形見分けです。決まりごとが多そうで身構えますが、実際に押さえるべき点はそう多くありません。この記事では、形見分けの時期とマナー、そして意外と語られない「もらう側」の心得を整理します。

結論:時期は四十九日のあとが目安。ただし決まりではない
形見分けは、四十九日の忌明けを過ぎてから行うのが一般的とされています。法要で親族が集まる機会でもあり、話をまとめやすいタイミングだからです。
ただ、これは慣習であって法律上の決まりではありません。宗派や地域によって考え方も違います。遠方の親族が集まれるのがその日しかない、賃貸の退去期限が迫っている、といった事情があるなら、前後してもまったく問題ありません。
大事なのは日取りより、次に挙げる2つの順番を守ることです。
形見分けの前に、必ず確認したい2つ
相続の話が先
いちばん気をつけたいのがこれです。形見の中に財産的な価値のあるもの(宝石、貴金属、美術品、時計など)が含まれる場合、それは相続財産の一部です。相続人全員の合意なく誰かが持ち帰ると、後々の遺産分割でもめる原因になります。
さらに、相続放棄を考えている人がいる場合はより慎重に。遺品を処分・取得すると相続を承認したとみなされるおそれがあります。詳しくは遺品整理はいつから始める?にも書きましたが、心当たりがあるなら弁護士や司法書士に先に相談してください。
高額な品の評価や税金の扱いはケースによって変わります。判断に迷うものが出てきたら、税理士など専門家に確認するのが確実です。
誰が声をかけるかを決める
複数の家族がそれぞれに「これあげる」と言い始めると、確実に混乱します。窓口を一人に決めて、その人が全体を見ながら進める。地味ですが、これがいちばんのトラブル予防です。
マナーとして知られていること
慣習として語られる点をまとめます。「絶対」ではなく「一般にそう言われている」程度に受け取ってください。
- 目上の人には、こちらから贈らないのが一般的とされています。ただし本人から希望があれば別です。迷う場合は「よろしければ」と打診して意向を聞くのが無難です
- 品物は包装せず、そのまま手渡すのが基本とされています。贈り物ではなく形見だからです
- 状態を整えてから渡します。衣類ならクリーニング、時計なら簡単な手入れ。そのままの状態で渡すと、受け取る側が扱いに困ります
- 高価すぎる品を親族以外に渡すのは避けたほうが無難です。相手の負担になりますし、贈与税の問題が生じることもあります
もらう側の心得
形見分けの記事はたいてい「渡す側」の話で終わりますが、もらう側にも迷いがあります。
断ってもいいのか。結論から言うと、断って構いません。「ありがたいけれど、私は写真を1枚いただければ」と伝えるのは失礼ではありません。無理に受け取って持て余すほうが、故人にも家族にも申し訳が立たないからです。
受け取るなら、使うか飾るかしたほうがいい。しまい込んだまま忘れてしまうより、日常のどこかに置くほうが、形見としての意味が続きます。
そして、あとで手放すことになっても自分を責めなくていい。生活が変わり、持ち物も変わります。手放し方に選択肢があることは親の着物、どう手放す?や実家の雛人形・日本人形、どう手放す?でも書いたとおりです。
貴金属や家具まで含めた手放し方は遺品の貴金属・ブランド品・家具、どう手放す?にまとめました。
わが家の場合
父の形見で最初に決まったのは、時計と眼鏡でした。葬儀のあと、母が「これは残す」と言って棚に置いたきり、そこにあります。
妹とは特に相談もしませんでした。というより、二人とも欲しいものが違っていて、話す必要がなかったのです。私は父の万年筆をもらい、妹は父が使っていたマグカップを持って帰りました。傍から見たら価値のないものばかりですが、たぶん形見分けとはそういうものなのだと思います。
金額の大きいものほど慎重に、価値のないものほど気軽に。この使い分けさえ間違えなければ、形見分けはそんなに難しい行事ではありません。
今日やることは、これだけ
- 財産的な価値がありそうな品がないか、先に洗い出す
- 形見分けの窓口を家族のうち一人に決める
- もらう側になったときは、断ってもいいと覚えておく
