親の葬儀を考えるとき、まず戸惑うのが名前の多さです。家族葬、一日葬、直葬、火葬式。何がどう違うのか、どれを選べばいいのか。この記事では、4つの形式の違いと費用の目安、そして選ぶときに実際に効いてくる考え方を整理します。

結論:違いは「誰を呼ぶか」と「何を省くか」だけ
4つの形式は、まったく別のものではありません。通夜と告別式という2つの儀式があって、それを両方やるか、片方だけにするか、どちらもやらないか。そして参列者を広く招くか、身内に絞るか。この2つの軸の組み合わせです。

いま最も多く選ばれているのは家族葬で、47.0%と半数近くを占めます。次いで一般葬が30.2%、一日葬11.9%、直葬・火葬式10.8%という順です(鎌倉新書の全国調査・2026年)。
つまり「家族葬」は特別な選択ではなく、すでに標準になっています。
4つの形式の違い
| 形式 | 通夜 | 告別式 | 参列者 | 費用の平均 |
|---|---|---|---|---|
| 一般葬 | あり | あり | 親族・知人・仕事関係など広く | 122.01万円 |
| 家族葬 | あり | あり | 家族・親族・親しい人に限る | 96.39万円 |
| 一日葬 | なし | あり | 限定しないことも多い | 74.43万円 |
| 直葬・火葬式 | なし | なし | 家族などごく少数 | 49.56万円 |
費用は同調査による総額の平均です(全体平均は96.73万円)。地域や参列者数で大きく変わるので、目安として見てください。
なお、直葬と火葬式はほぼ同じ意味で使われます。呼び方が違うだけ、と考えて差し支えありません。
費用の差はどこから生まれるか
一般葬と直葬で70万円以上の差がつくのは、儀式の回数だけが理由ではありません。参列者が増えると、飲食費と返礼品費が積み上がります。同調査では飲食費の平均が11.67万円、返礼品費が13.03万円でした。
一方で、参列者が多ければ香典も増えます。家族葬にすれば必ず安く済む、とは限らないのが難しいところです。実際の負担を考えるなら、支出だけでなく香典の見込みも合わせて考える必要があります。
決めるのは、時間のない場面
形式を選ぶ場面は、亡くなってから火葬までの流れの中に組み込まれています。

法律で、亡くなってから24時間は火葬できないと定められています(墓地埋葬法)。また火葬には市区町村が発行する火葬許可証が必要で、死亡届の提出とあわせて手続きします。死亡届の期限は7日以内です。期限のある手続き全体は親が亡くなった後の手続き一覧にまとめました。
問題は2番目です。搬送の直後、まだ気持ちの整理もつかないうちに、形式と規模と費用を決めることになります。
8割以上が、比較せずに決めている
この記事でいちばんお伝えしたいのは、この数字です。
同じ調査で、葬儀社の見積もりを「1社のみ」しか取らなかった人と、「見積もりを取らなかった」人を合わせると87.1%でした。さらに、葬儀の準備を「していなかった」と答えた人が63.8%。葬儀社を決めた時期も「亡くなった後」が最も多くなっています。
これは誰かの怠慢ではなく、そういう状況だから、というだけの話です。搬送先を決めるところから時間がなく、比べるという発想が出てこない。私自身、父のときにまったく同じでした。
だからこそ、動けるうちに少しだけ調べておく意味があります。契約する必要はありません。形式の名前と費用の桁を知っているだけで、当日の判断はずいぶん楽になります。
決めておくと当日が楽になる3つ
葬儀の内容を細かく決める必要はありません。次の3つだけで十分です。
- 「誰を呼ぶか」。これが形式をほぼ決めます。仕事関係まで呼ぶなら一般葬、身内だけなら家族葬。親に「誰に知らせてほしい?」と聞いておけると理想的です
- 「どこに頼むか」。葬儀社を1つでも知っていれば、搬送先を即決できます。資料請求だけしておく方法もあります(「家族葬のこれから」とは?資料請求だけで割引が効く、全国対応の葬儀プラン)
- 「お金をどこから出すか」。亡くなると口座が凍結されるため、葬儀費用の支払いに困る家族は少なくありません。仮払い制度の使い方は死亡すると銀行口座はいつ凍結される?に書きました
宗派やお寺との付き合いがある場合は、その確認も早めに。菩提寺がある場合、葬儀社を先に決めると段取りが合わなくなることがあります。
事前にやっておくことをもう少し具体的に知りたい方は、親の葬儀、事前に決めておく5つのことにまとめました。
家族葬を選んだ場合、訃報に「参列辞退」をどう書くかが難所になります。伝え方は訃報は誰にどう知らせる?連絡の順番と、今から作れる連絡先リストに例を載せました。
わが家の場合
父のときは一般葬でした。父の希望を聞いたことはなく、母が「お父さんは人付き合いが多かったから」と決めたのを、私たちがそのまま受けた形です。
葬儀社は、病院で渡されたリストの中から選びました。比べていません。金額を見たのは全部終わったあとです。あのとき何かを間違えたとは思っていませんが、母に「これでよかった?」と聞けなかったことだけは、少し心残りです。
その反省で、母には一度だけ聞きました。「お母さんは、どういうのがいい?」。返ってきたのは「近い人だけでいいわよ、大げさなのは嫌」。それだけ聞けていれば、次は迷いません。
今日やることは、これだけ
- 親に「誰に知らせてほしい?」と一度だけ聞いてみる
- 実家の宗派と、付き合いのあるお寺があるかを確認する
- 葬儀費用をどこから出すか、家族で見当をつけておく
