葬儀の準備というと、生前契約や互助会への加入を思い浮かべるかもしれません。でも、そこまでする必要はありません。この記事では、契約をしなくても当日の迷いが激減する5つの確認事項と、親への切り出し方をまとめます。

結論:契約はいらない。5つを「知っておく」だけでいい
葬儀の準備でやるべきことは、決めることではなく知ることです。親の希望、実家の宗派、知らせる範囲、頼み先の候補、お金の出どころ。この5つを知っているだけで、当日の判断はまったく別物になります。
前提として、多くの家族は準備なしで当日を迎えています。喪主経験者への全国調査では、葬儀の準備を「していなかった」という回答が63.8%でした(鎌倉新書・2026年)。準備しないのが普通なので、少しでも知っていれば、それだけで有利です。
形式ごとの違いと費用の目安は家族葬とは?一般葬・一日葬・直葬との違いと費用の考え方にまとめました。この記事は、その次にやることの話です。
事前に決めておく5つのこと
- 親がどんな形を望むか。「近い人だけでいい」「にぎやかに送ってほしい」。この一言だけで形式が決まります。細かい希望は要りません
- 実家の宗派と、付き合いのあるお寺があるか。これがいちばん見落とされます。次の章で詳しく書きます
- 誰に知らせるか。全員の連絡先を集める必要はなく、「どこまで声をかけるか」の範囲だけで十分です。親戚、近所、仕事関係、趣味の仲間。範囲が決まれば人数の見当がつき、規模も費用も逆算できます
- 頼み先の候補を1つ持っておく。葬儀社を1社でも知っていれば、搬送先を即決できます。契約せずに資料請求だけしておく方法もあります(資料請求だけで割引が効く例は「家族葬のこれから」とは?資料請求だけで割引が効く、全国対応の葬儀プランへ)
- 費用をどこから出すか。亡くなると口座は凍結されます。仮払い制度の使い方は死亡すると銀行口座はいつ凍結される?に書きました
このうち1・2・3は親に聞くこと、4・5は家族で決めておくことです。全部を一度にやる必要はありません。
「菩提寺」だけは、順番を間違えると戻せない
5つの中で、後から取り返しがつかないのがお寺の話です。
先祖代々のお墓が特定のお寺にある場合、そのお寺を菩提寺(ぼだいじ)といいます。菩提寺がある家では、葬儀の形式を決める前にお寺へ相談するのが基本とされています。

葬儀業界の各社が注意喚起しているのは、相談せずに進めたときの納骨です。菩提寺に知らせないまま別の僧侶に読経を頼んだり、戒名を独自につけたり、無宗教の形で済ませたりすると、あとで納骨を断られる場合があるとされています。葬儀は終わっているのに遺骨の行き先だけが決まらない、という状況は、家族にとってかなりつらいものです。
やることは難しくありません。実家の宗派と、お寺と付き合いがあるかどうかを聞いておくだけです。付き合いがあるなら、お寺の名前と連絡先も。菩提寺がなければ、僧侶の手配は葬儀社に頼めますし、選択肢はぐっと広がります。
お墓そのものをどうするかを考えている場合は、墓じまいとは?流れ・費用・親との話し合い方もあわせてどうぞ。
どう切り出すか
とはいえ、葬儀の話は切り出しにくいものです。親からすれば「自分が死ぬ前提の話」ですから、当然です。
うまくいきやすいのは、自分の話や世間話から入る形です。「うちのお寺ってどこだっけ、住所も知らないなと思って」なら、宗派の確認は世間話で終わります。「最近は家族葬が半分近くらしいよ」とニュースの話として振れば、形式の希望も引き出しやすくなります。
逆に避けたいのは、「もしものときのために決めておいて」という切り出し方です。相手に判断を迫るうえ、話が重くなります。聞くのは事実だけ、判断は求めない。この線を守ると、たいてい会話は続きます。
切り出し方の基本は親の終活、どう切り出す?気まずくならない話し方、他に聞いておきたいことは親が元気なうちに聞いておきたい10のことにまとめています。
わが家の場合
父の遺影は、運転免許証の写真を引き伸ばしたものでした。急なことで他に使える写真がなく、母が財布から免許証を出して葬儀社に渡したのです。
正面を向いた、少し緊張した顔。父らしくないな、と葬儀のあいだじゅう思っていました。誰も悪くありません。ただ、写真が1枚あればよかっただけの話です。
それから、母とは旅行のたびに写真を撮るようにしています。遺影のためです、とは言いません。「せっかくだから」と言って撮って、いいのが撮れたら残しておく。5つの確認事項には入れませんでしたが、これも準備のひとつだと思っています。
今日やることは、これだけ
- 実家の宗派と、付き合いのあるお寺の有無を聞いてみる
- 親に「どんな形がいい?」と一言だけ聞いてみる
- 次に会うとき、正面から撮った親の写真を1枚残しておく
