実家は兄弟でどう分ける?現物・代償・換価・共有の4つの方法

実家は兄弟でどう分ける?現物・代償・換価・共有の4つの方法

実家という財産は、現金のように半分ずつにできません。兄弟姉妹で分ける段になって、話がここで止まる家は多いと思います。分け方には名前のついた4つの方法があります。それぞれに向き不向きと、お金の面での注意点があります。どれを選ぶかを考える前の材料として整理します。

目次

結論。分け方は4つ。決めないと共有のままです

まず押さえておきたいのが、民法898条です。相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属すると定められています。つまり何も決めなければ、実家は自動的に相続人全員の共有になります。

共有は「決まった状態」ではなく「まだ決めていない状態」です。ここが分かれ目になります。

なお、親の一方が亡くなって残された配偶者が実家に住み続ける場合は、所有権と住む権利を切り離す配偶者居住権という5つ目の選択肢もあります。

分け方として挙げられるのは次の4つです。

  • 現物分割。土地を分筆するなど、財産そのものを分ける
  • 代償分割。1人が実家を取得し、他の相続人に金銭などを払う
  • 換価分割。売却して、その代金を分ける
  • 共有。持分を決めて全員の名義にする

民法258条は、共有物の分割を裁判所に求めた場合の方法として、現物を分割する方法と、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法を挙げ、それができないときや価格を著しく減少させるおそれがあるときは競売を命ずることができる、としています。家庭裁判所に持ち込まれた場合も、だいたいこの順番で検討されます。

遺産分割の基準そのものは民法906条にあります。財産の種類や性質に加えて、各相続人の年齢、職業、心身の状態、生活の状況、その他一切の事情を考慮して行う、と書かれています。持分の数字だけで決めるものではない、ということです。

引き継ぐなら代償分割。現物分割が使える家は多くありません

現物分割は、広い土地を分筆して分けるようなやり方です。建物は切り分けられませんし、宅地も分けると接道や面積の条件で価値が大きく下がることがあります。実家が1軒だけという家では、現実には選びにくい方法です。

そこで実務上よく出てくるのが代償分割です。実家に住み続ける人や、親の介護を担ってきた人が実家を取得し、他の相続人に金銭を払って差を埋めます。

代償分割と換価分割の違いを比べた図

注意したい点が2つあります。

1つは、払う側にまとまった現金が要ることです。相続財産の中に預貯金が十分あればそこから払えますが、財産が実家しかない場合は自分の貯金から出すことになります。

もう1つは税金です。国税庁は、代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産である場合、その履行をした人については履行時の時価でその資産を譲渡したことになり、所得税が課税されると説明しています。現金の代わりに自分名義の土地を渡すと、渡した側に所得税がかかる、ということです。代償金は現金で払うのが基本だと考えておくほうが安全です。

売って分けるなら換価分割。税の期限が2つあります

誰も住まないのであれば、売って現金にしてから分けるほうが公平で分かりやすくなります。換価分割です。

ただし売却益が出れば譲渡所得として課税されます。実家を売る流れの記事に書いたとおり、空き家の3,000万円特別控除は相続から3年目の年末という期限で決まります。

もうひとつ、相続税を納めた家には取得費加算の特例があります。国税庁によると、相続や遺贈で財産を取得し、その人に相続税が課税されていて、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を取得費に加算できます。相続税がかかっていない家には関係のない特例なので、そこは先に確認してください。

売ると決めたら、この2つの期限から逆算することになります。不動産の売却は買い手が現れるまでの時間が読めません。話し合いに何年もかけていると、使えたはずの特例が消えます。

共有という4つ目。選ぶ前に知っておきたいこと

「とりあえず3人の共有で」という結論は、その場では角が立ちません。ただ共有にすると、その後にできることが限られます。

民法251条は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができないと定めています。売る、建て替える、取り壊すといった行為は全員の同意が要ります。民法252条では、管理に関する事項は持分の価格の過半数で決めるとされ、設定できる賃借権の期間にも上限があります。建物なら3年、山林以外の土地なら5年です。

そして時間が経つほど、人が増えます。共有者の1人が亡くなれば、その持分はその人の相続人に移ります。名義が祖父母のままという家で関係者が10人を超えるのは、これが繰り返された結果です。

もうひとつ、期限の話があります。民法904条の3は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割には、特別受益や寄与分の規定を適用しないと定めています(10年を経過する前に家庭裁判所へ分割請求をした場合などの例外はあります)。介護を担ったとか、生前に援助を受けたといった事情を主張できなくなり、法定相続分で分けることになります。先送りは、公平を調整する余地を失わせる方向に働きます。

分け方そのものは遺産分割協議で決め、合意できなければ家庭裁判所に分割を請求することになります。税額の試算は税理士、登記は司法書士、合意が難しいときは弁護士と、相談先が分かれます。どれか1つを決める前に、自分の家がどの方法に向いているかだけでも専門家に聞いておくと、話し合いの軸がぶれません。

わが家の場合

編集部の一人は、父を見送ったとき、実家の名義を母に移しました。母がそのまま住んでいるので、これは迷いませんでした。問題になるのは次です。

妹とは仲がよく、今のところ揉める気配はありません。それでも母がいなくなった後、実家をどうするかは話していません。私は遠方で、妹は近くに住んでいます。共有にしておけばその場は収まる、と考えかけたことがありました。調べてみて、それは決めたことにならないと分かりました。

NEXT STEP

今日やることは、これだけ

  • 実家に誰かが住み続ける予定があるかどうかを、自分の中ではっきりさせる
  • 実家以外に預貯金がどのくらいあるか、親に大まかな額を聞いてみる
  • 兄弟姉妹の誰かが実家を欲しいと思っているか、雑談の形で聞いてみる

出典

  • e-Gov法令検索「民法」(898条・906条・907条・251条・252条・258条・904条の3) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 国税庁「No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4173.htm
  • 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
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この記事を書いた人

中心メンバーは、数年前に父を見送った40代の会社員。デジタル遺品や実家の整理で「準備しておけばよかった」と痛感した経験から、同じ立場の方に向けて、親の「もしも」に少しずつ備えるための情報を集めて記事にしています。

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